LaTeXで略語の初出時だけ正式名称を出力する方法
論文などの整った文書で略語を使用する場合は、よく知られている略語を除き、以下のように書くことが求められます。
- 初出時は正式名称を書き、続けて括弧の中に略語を書く。
- それ以外は略語だけを書く。
例えば、TPDDという略語があり、その正式名称がtime plane destroyed deviceであるとする*1と、
ことが求められます。
この決まりを守ることが簡単ではないことは、論文を書いたことがある人ならお分かりでしょう。文章を推敲する過程で文を追加・削除・移動していると、以下のようなことが往々にして発生します。
- 略語の正式名称がどこにも書かれていない。
- 同じ略語の正式名称が複数回書かれている。
- 初出時に正式名称が書かれていないのに、2回目の出現時に正式名称が書かれている。
このようなことが起こらないようにひとつひとつの略語について注意を払いながら推敲を行うことには大変な労力がかかります。
こうした問題を解決するLaTeXのパッケージがacronymパッケージです。このパッケージがインストールされているかは以下のコマンドで確認可能です。
$ kpsewhich acronym.sty
パスが表示された場合はインストールされています。そうでない場合はCTANの配布ページからダウンロードしてインストールしてください。
acronymパッケージを利用する際は、プリアンブルに
\usepackage{acronym}
と書きます。略語を定義する際は
\newacro{略語を呼び出す際の名前}[略語]{略語の正式名称}
と書きます。略語を呼び出す際は、
\ac{略語を呼び出す際の名前}
と書くことで、初出時には「略語の正式名称(略語)」の形式で出力され、2回目以降は「略語」の形式で出力されます。なお、文頭で使う場合は\ac
コマンドの代わりに\Ac
コマンドを利用します。こうすることで、正式名称が出力される際の頭文字が大文字になります。
以下にacronymパッケージを利用したソースコードの例を示します。
\documentclass[uplatex,dvipdfmx]{jlreq} \usepackage{acronym} \newacro{TPDD}[TPDD]{time plane destroyed device} \begin{document} 朝比奈さんが使っていた\ac{TPDD}は、時間平面を破壊することで時間移動を可能にするデバイスである。キョンは\ac{TPDD}の正式名称を朝比奈さん(大)から聞いた。 \end{document}
このソースコードをupLaTeXとdvipdfmxで処理すると以下のような出力が得られます。
acronymパッケージについての詳しい情報はCTANの配布ページからリンクされているDocumentation、あるいは
$ texdoc acronym
を実行することで表示される文書を参照してください。